英語圏に住めば英語を話せるようになるか
「英語を習得したい」のであれば、「英語圏に住むべき」でしょうか。
それとも、「英語圏に住まなくても、英語は習得できるので変わらない」でしょうか。
このトピックは、言語習得をする人々の間で割と永遠のテーマ的に議論されるところですが、今回はこれを取り上げて色々と考えてみたいと思います。
私自身、小6〜中2のあたりにアメリカにいた帰国子女なので、「英語圏に住んで英語を学んだ経験」があります。また、今はスペイン語や中国語を日本国内で勉強しているので、英語ではありませんが「国内にいながら外国語を学ぶ感覚」もわかります。
この2つの経験から何か見えてくるのではないかと思い、私の独断と偏見で記事を書いてみます。
今回は英語ということで書いてみましたが、英語に限らずあらゆる外国語習得に関係する内容だと思います。
英語圏に住むことでえられるメリット
ChatGPTで「外国語を覚えるためのベストプラクティスは何?」と聞くと下記のように「まずは自分をその言語にどっぷり浸からせろ、できたらその国で時間を過ごせ」と言われます。
Immerse Yourself in the Language
- Surround Yourself: Engage with native speakers, listen to music, watch movies, and read books or articles in the target language.
- Travel: If possible, spend time in a country where the language is spoken.
では、英語を学ぶ上で英語圏に住むメリットいうのはどのくらいあるのでしょうか。
日常的な言語の使用
当たり前ですが、日常で英語を使う機会が増えます。買い物、レストラン、アパートの契約、家賃の支払い、色々な面で英語が必要になります。
現地の友達ができたら、その友達に合わせて英語のコンテンツを嗜み、話題を合わせることも必要になるでしょう。
日本ではあまり会うことのできない英語のネイティブスピーカーと、いっぱい話せます。
文化的理解と合わせた英語学習ができる
言語を理解するのに、往々にしてその言語が存在する国の文化を知らないといけないことが多々あります。
流行りの言葉、習慣、価値観といった部分を理解しないと学べないことがあります。
誰かがくしゃみをしたら「Bless you!」と言う、というのを感覚的に理解するためには、やはりネイティブの人と関わらないと掴めないでしょう。なんだよBless youって、そんなの本当に言うかいな、と日本にいると思うでしょう。言うんですよね。
英語の幅広さを知れる
ネイティブで英語を話す人、といっても本当にいろんな人がいます。めちゃくちゃ滑舌の悪いネイティブスピーカーの人とかもいますし、ラップ調にしか話さない人もいます。
あとはネイティブではない、別の国から来た英語を話す人もたくさんいます。インド人、韓国人、中国人、コロンビア人、トルコ人、フランス人、ノルウェー人、いろんな国の人がクセ強な英語を話します。
そんなに彼らと出会えて話す機会は、日本ではそんなにないと思います。
強制的に英語を使うことになる
英語圏に住むと、ある程度英語を使わざるをえなくなります。
これについては次の節で深く触れていきます。
英語圏に住むことは効果的だが、万能策ではない
英語圏に住むことは英語学習に効果的です。あらゆるメリットがあることがわかりました。
ただ、無条件に英語圏に住めば効果的であるわけではありません。
英語圏に住むと英語を話すことが死活問題になる
外国語を学ぶために一番必要なことは、モチベーションだと思います。
日本にいながら、プライベートで、このモチベーションを保つのは結構大変です。相当語学好きか、上手く独学を習慣化しているか、日本の中で上手く英語だらけの環境をプライベートに構築しているか、外資系で働くかなどしないと、難しいです。
一方、英語圏の海外に行けば、英語が分からなければ生きていけない、という死活問題レベルの状況になり、強制的にモチベーションを湧かせることができることができます。
生活面でも言語的に追い込まれることになるので、どんな人でも一定の効果があるでしょう。全く英語が分からない場合でも、大量の刺激を受け、一定のスキルアップは間違いなくします。
ただし、残念ながら英語圏に行くことは、英語習得の万能策ではないと考えます。
ここからその根拠について、持論と経験を展開しつつご説明します。
英語圏に身を置いて、効果的に英語習得ができる条件
英語圏に身を置いて良い効果が出るには、いくつか条件があると思っています。独断と偏見ですが、例えば下記の条件がある程度揃う場合だと考えます。
- 社交的で人と仲良くするのが好き
- 謙虚で学ぼうとする姿勢がある
- メンタルが比較的強い、タフである
- 主体的な理由で英語圏に行っている / 好きで英語圏に行っている
- 日本語が通じるコミュニティに逃げない
要は、社交的でタフで、何でも乗り越えていく人。現地の人とコミュニケーションを取り続けようと思う人・・・であれば何もいうことがありません。
ただ人間そんな人ばかりではありません。自分もそんなタイプの人間ではないので、過去に苦労してます。その観点から、ちょっとネガティブですが英語圏に行くリスクを述べていきます。
英語圏に住み、英語習得を死活問題にするリスク
言葉が通じないことは、精神的リスクがそれなりに大きい
まず英語が話せない状況で海外に行くことになりますが、初めての環境で異なる言語で過ごすので、とても大変なのは間違いありません。
もちろん、海外で生活していて悪いことだけではありませんし、良い人にもたくさん出会うでしょう。
暖かく迎えてくれたり、真摯にコミュニケーションをとってくれたり、急にご飯食べさせてくれたり、守ってくれたり、助けてくれたりする人などが色々出てきます。
ただ、負荷のかかる状況は必ず生じます。
- 頑張って英語を話しても、何も理解されずに恥ずかしい思いをすることがあります。
- 逆に何か言われても全然理解できず、恥ずかしい思いをして、最後には「こいつ英語わかんないから放っておこ」という感じで見捨てられることもあります。
- 英語で話そうとしたら発音をバカにしてくる人もいるでしょう。
- 人種差別や諸々のトラブルもありえます。
そのくらい大したことがない、覚悟している、と仰るかもしれません。
「自分の言ったことが相手に理解されない」しかも「周りに誰も助けてくれる人がいない」といった状況が、毎日続くとどうでしょうか。
これは、「全然平気だ、いつか順応できる」という人と、「耐えられない」という人が分かれると思います。それなりに精神的なリスクがあると思います。
思春期の子供にはとっては特に辛い
自立した大人であったり、目的意識を持って留学している大学生や社会人とかならまだ良いですが、親の都合で現地の学校に通うことになった思春期の子供にとっては非常に大変なことが多いです。
一般的に幼い頃の方が英語習得はしやすく、脳科学(?)では良い面も多いと思います。ただ、学校への順応が大変です。
小学校(エレメンタリースクール)は、大丈夫かもしれません。難しい課題も特にないので子供たちもストレスが少なく、先生たちも優しい。周りも助けてくれるし、宿題も授業も難しくありません。
でもミドルスクールやハイスクールは大変です。課題も多く難易度がそれなりにあり、校内も度々荒れています。
自分は12〜14歳の頃にアメリカに行きましたが、思春期の自尊心マックスの時にミドルスクール通いだったので、割と地獄でした。
思春期といったら恥をかこうものなら死んでやろうかと思うような時期ですが、そんな時期にアメリカのミドルスクールでは週4くらいで皆の前でスピーチやプレゼンテーションをさせられます。下手な英文をたくさん作って、下手な発音でみんなの前で発表する毎日です。周りも思春期なので、悪口やいじめもあります。そしてそもそも、その環境に自分から身を置きたくて置いているわけではない、なんで俺はここにいるんだ、という感じです。
そんなこんなで、無事自分は生き延びて最後日本に帰ったものの、英語圏に住んだ経験があるにも関わらず「平均的な日本人よりは英語が話せるといえば話せるが、そこまで英語が話せる状態ではない」という微妙な仕上がりでした。
※プロフィールに書いてあるとおり、私はその後大人になってから、日本で過ごしつつ英語を勉強して結構喋れるようになりました)
もちろん、英語習得力や環境適応力には、個人差があります。うまく環境に適応した子は、友達を沢山作って、英語ペラペラになって帰国しました。でも全然適応できない子は、不登校になり、英語は全く学ばずに帰っていました。
地域差はありますが、自分の周りで不登校になる確率は低くなかったです。(もう20年以上前の話ですが、きっとそんなに変わらないでしょう)
辛すぎて、自分の命を断つ子もいます。個人的にはお願いですが、思春期の子を海外に連れていく時は、あまり厳しくしないで下さい。英語習得とかどうでも良いので、寄り添ってあげてください。生きてることが一番大事です。(なんのブログか分からなくなってきた・・・)
英語圏でも英語なしで過ごせてしまうことがある
実は英語圏に来たとしても、なんだかんだで「プライドやこだわりを捨てることにより、英語を使わなくてもなんとなく毎日を生き続けられる」ということが往々にしてあります。
え?どういうこと?と思われる方もいらっしゃると思うので、説明していきます。
「最低限の表現」を知っていれば何とか生きることはできる
例えば自分はミドルスクールの時、ほぼ下記の表現を軸に生きていました。
- YES, NO OK (はい、いいえ OK)
- No way (絶対嫌)
- I don’t know (わかりません)
- Can I have this (これください)
- I forgot it(忘れました)
あとは、面倒な奴らや襲ってくるトラブルに対処するために、次の表現を覚えます。
- Shut up (黙れ)
- Stop it (やめろ)
- Give it back (返せ)
- Go away(あっちいけ)
- It’s not my fault (僕のせいではありません)
- He hit me (あいつが叩いてきました)
- He stole it(あいつが盗みました)
- He did it (あいつがやりました)
- (あとはバカとかクソとかのバッドワードやFワード)
分からない言葉がきたら、「I don’t know」で返しYES/NO/OKで答えられる質問が来るまで待つ。欲しいものがあれば「Can I have it」といって金を出す。嫌なことがあれば汚い言葉を言うか道化になる。自分のせいにされそうになったら「It’s not my fault」や「NO」と言って誰かを指さす。理解できないけど悪口言ってるなと思ったら「Shut up」と言う。誰か殴ってきたら先生に「He did it」と言ってチクる。
極論、上記の表現さえ覚えれば、ミドルスクールを生き抜くことができます。
宿題やテストをやろうがやらまいが、良い成績を取ろうが取らまいが、親の海外赴任期間が終われば日本に帰れるのでなんとかなると言う気持ちで、プライドを捨てて耐え抜けば生きていけます。
まぁミドルスクールでどう生きるかは、そこまで皆様の参考にならな違かもしれませんが、基本的にどこの社会においても最低限必要なことは常にシンプルです。
「これ欲しい」「はい、いいえ」「わかりません」と言う言葉が言えて、生活するための金があり、プライドを捨てれば、どこでも生きていくことができてしまいます。
英語圏に行くだけ行って、上記のような「抵抗飛行生活」をやって日々をこなし、あまり英語上達できずにいる海外在住の日本人は、昔も今も結構多いんじゃないかと思います。
日本人コミュニティに逃げてしまう
海外に行っても、割と日本人は探せば結構その辺にいます。
海外生活で苦労している中、同じ日本人に出会うととてもホッとします。多くの場合、仲良くなりすぎてしまいます。
下手すると、日本人コミュニティで日本語でばかり話している毎日になります。
何かショッピングや学校、仕事する時などは「最低限の表現」で過ごし、残りは日本人コミュニティで過ごす。こんな調子であれば、恐らく英語習得はできないでしょう。
私もミドルスクールの時は、日本人の友達数人とばかりつるんでました。よく周りのアメリカ人に「ここはアメリカだ、英語を話せ」と絡まれたりもしましたが、当時の自分はやめませんでした(というか、やめれませんでした)。
私自身大人になってから海外に住んだことがないのでなんとも言えないですが、大人になればより一層付き合う相手を選べるので、日本人同士で固まることは容易となっているのではないかと思います。
今や翻訳技術が発達しすぎているイージーモードありの世界
大した翻訳技術がなかった時代ですら、「最低限の表現でも生きていける」上記の有様でした。さらに今や、翻訳技術が進化してすごいことになっています。
Google 翻訳もあるし、DeepLもあるし、と思っていたら今はChatGPTが鬼のように優秀で、GPT4oでは会話もできてしまう。さらに他の自動翻訳ツールがバンバン出ている。
最低限のコミュニケーションは、テクノロジーの進歩で、実に簡単になってしまっており、より「英語を使わないで英語圏で生きることが容易になった」と考えて良いでしょう。
イージーモードが用意された世界で、英語圏できちんと英語習得できる人はどのくらいいて、どのくらいがイージーモードに走り英語習得をできずに終わるのでしょうか・・・。
英語圏に住むよりも大事なこと
英語圏に住むのはメリットが色々ありつつ、リスクもあるし、結局英語が身につかないで終わることもある。
結局のところ、英語圏に住むと言うのは、手段の1つでしかないと言うことです。
英語圏に住むかどうかは、英語習得の上で本質的な問題ではない。
これは自信を持って言い切れます。
なぜならば、自分自身が英語圏に住んでいた頃よりも、社会人になって日本で英語を勉強した後の今の方が英語が圧倒的に話せるからです。
他の例を挙げると、私の外国人の友達の何人かも、日本にきて日本語を学びたいと言いつつ、ずっと日本語を習得できずにいたりします。でも逆に日本から母国に戻った後になって、日本語を勉強してもっと日本語が話せるようになっているケースもあるのです。
では何が英語習得について「本質的」なのでしょうか。
英語漬けになること(別に国はどこでもいい)
結局英語漬けになれれば、どこの国にいてもいいわけです。
家で英語を中心とした生活を作ればいいし、メモや思考を全部英語にするのでもいい。自分の生活に英語をどれだけ入れられるかが一番重要です。
海外に住みつつ、家にずっといて、英語を使わないのであれば、日本にいるのとあまり変わりません。
(ちなみに自分は独り言は大体英語です。自分で自分に対してよく英語で話しかけます。あと悪口を言うときは英語にしています、バレないように笑)
主体的であること
よくニュースを聞き流ししておけば英語が上達する、と言うことを聞くと思います。もちろん、英語のリズムを掴むのができない、それを掴みたい、というのであれば意味があるかもしれません。けれど、そういう受動的なアプローチで英語を上達した人を周りであまりみたことが自分はありません。
自分の実感としても、いかに主体的であるかが学習効率を決めていると思います。
自分の興味のある記事を調べて勉強する、自分の言いたいことを表すために調べる、自分の伝えたいことを目の前の相手に伝える、相手の言うことをなんとかして理解しようと全集中する。
こういう主体性があるかないかが上達の鍵だと思います。
英語で話す仲の良い相手を作ること
結局言語は、コミュニケーションの手段です。相手がいなければ始まりません。相手と仲良くなりたい、色々と話したいと言う気持ちが大事です。
海外に住んでいようと、心が通じる話し相手がいなければ、大して深い話を英語ですることもなく、英語も上達しないでしょう。
そして今では、SNSや言語交換アプリなどもあり、インターネットを介していくらでも海外の友人を作れます。今や日本でもお金をかけず十分色々とできる環境が整っています。
どうしても友達ができないなら、自分自身に対して毎日独り言のように話しかけるのも効果的です。自分は結構独り言をよく英語で言いますが、かなり上達に役立っている気がします。自分の好きな話をできますし、会話のペースも自由自在です笑。恥ずかしがり屋な人にはおすすめです。
とにかく誰であれ、自分であれ、空想であれ、相手に話しかけてコミュニケーションを取ろうとすると良いと思います。
魂を込めて話す
根性論的な言い方になりますが、英語を話すときに、日本語と同じくらいどれだけ「魂」を込めて言えるか、言えるようになりたいかがポイントです。
相手に色々と伝えたいと思って、表現が色々と生まれて進化していくのが言語なので、まずはどんな形でも気の合う英語スピーカーを探して仲良くなることだと思います。
自分の言いたいことを、言いたいように話す時、人は生き生きとします。それは何語であっても同じです。魂を込めて、好きなことを、言いたいこと、真に思っていることを言う。これができるようにしていくことが大事です。
まとめ
- 英語圏に住むことで、基本的に英語習得を促進できる効果は大きい。
- 英語を使う機会が増え、文化的理解も深まる
- 強制的に使わざるをえない状況になり、モチベーションも上がりやすい
- 英語圏のような言葉の通じない環境に身を置くリスクもそれなりにある
- コミュニケーションが取れない日々が続くと辛い
- 思春期の子供にとっては特に辛い
- 英語圏に住んでも、英語が上達しないこともある
- プライドを捨てれば、最低限の表現だけで生きようと思えば生きれる
- 日本人コミュニティに依存しうる
- 最近は自動翻訳技術が発達しており、いっそう楽できてしまう
- 英語圏に移り住むことは手段の1つであるが、本質的には大事にすべきことが他にある
- 英語に浸るのは別に日本でもできる、海外だからといってできるとは限らない
- 主体性が大事、ないと結局上達しない
- 英語を話す相手を探すことが大事(インターネットを利用すれば日本でもできる、究極自分自身に語りかけてもいい)
- 魂を込めてその言葉を発すること